食生活と消化器癌│豆知識コーナー|練馬区 大泉学園の肝臓専門医・内科 大井手クリニック

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豆知識コーナー

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2006年7月1日

食生活と消化器癌

ハイライト
●脂肪
●環境因子
●肥満
●赤身の肉
●魚脂
●アルコール
●果物・野菜

食事因子が大腸癌に与える影響

食生活が消化器癌の発症に与える影響について、今回は大腸癌に関する総説を日本消化器病学会誌から紹介します。近年、日本人における大腸癌の罹患率、死亡率は著明に増加してきています。これは日本人の食生活がこの半世紀で大きく変化したことが強く影響しています。戦後の貧困の時代、穀物中心の食生活から肉、脂肪、卵の多い欧米型へと変化してきたことです。脂肪摂取に関しては半世紀前には10%程度であったのが15年前に25%を超え、さらに漸次増加しており、これは大腸癌死亡率の時間的推移と相関しています。大腸癌の発生にはいくつかの要因が考えられており、宿主(人間自身)因子だけでなく、環境因子や生活習慣、遺伝子の突然変異など、多段階的な異常の蓄積が関与しているとされています。一部の遺伝性大腸癌を除くと、90%の大腸癌は散発性であり、また一卵性双生児が同じ癌に罹患する割合は少なく、さらに日本在住日本人に比べて米国に移住した日本人や米国生まれの日本人では大腸癌のリスクが米国人に近いことなど、大腸癌の発症には遺伝因子よりも環境因子の影響がかなり大きいと考えられます。食習慣は癌の原因の3割を占めるとされ、大きな要因であり、特に脂肪食との因果関係が取りざたされています。
Ⅰエネルギー摂取量・肥満;
20世紀なかば、動物実験において、カロリー制限でさまざまな腫瘍の進展が抑制されたことに端を発し、果たしてヒトにもあてはまるのかどうかが最大の関心事でした。いくつかの報告から、過栄養による脂肪の蓄積はヒトの発癌との関連が認められており、BMI(body mass index)30以上では結腸癌のリスクが1.56倍、直腸癌のリスクが1.66倍、BMI35以上では結腸癌リスクが2.48倍に上昇します。ちなみに、BMI20未満のやせ群でも結腸癌リスクが2.3倍と増加しています。
Ⅱ食事摂取の頻度;
一日に4回以上の食事をする群では3回以下の群に比べて大腸癌リスクが1.7倍になるという報告がありますが、総摂取カロリーや食品の内容の調整がされていないため、問題ある結果です。
Ⅲ肉類;
赤身の肉を大量に食べるヒトの大腸癌発生率が高いことは以前から示されていました。これは、赤身に多く含まれている鉄を介した活性酸素の過剰生成や、高熱処理や代謝過程で生じるニトロソ化合物などのDNA障害作用などが考えられています。ソーセージなどの加工食品は大腸癌のリスクを上昇させるとされています。
Ⅳ脂肪;
海外の報告では、大腸癌の発生率が1人当たりの脂肪摂取量と非常に強い相関があると報告されています。脂といっても動物性や植物性などがありますが、魚油に含まれている脂は大腸癌発生に対して抑制的に働きます。 
Ⅴアルコール;
疫学的調査では大腸癌とビールの消費量は相関関係があるとされ、ビールを週に14杯以上飲む群における直腸癌の発生リスクは非飲酒群の3.5倍という報告があります。日本人においては毎日飲酒する群は非飲酒群に比べてリスクは2倍になることが示されています。リスク増大の要因として葉酸やビタミン不足、アルコール代謝産物アセトアルデヒドによるDNA障害などが考えられています。
Ⅵ果物・野菜;
疫学的研究において、果物と野菜の摂取が多いと大腸癌をはじめ様々な臓器の癌を抑制することが知られています。要因はカロチノイド、葉酸、ビタミンC、フラボノイド、食物繊維などが挙げられていますが、それらのメカニズムは不明です。
Ⅶ食物繊維;
食物繊維は大腸内の発癌物質を希釈し、結合することで腸管内の停滞時間を短縮し、当初は大腸癌を抑制すると考えられていましたが、現段階では不明瞭とされています。
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