高齢者の疾患の特徴-④-│豆知識コーナー|練馬区 大泉学園の肝臓専門医・内科 大井手クリニック

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豆知識コーナー

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2007年2月1日

高齢者の疾患の特徴-④-

ハイライト
●貧血
●紫外線
●糖尿病性神経障害
●末梢循環障害
●乾燥
●皮下出血
●眼圧

血液疾患、皮膚疾患、感覚器疾患

今回も、高齢者の疾患の特徴について概説します。
<血液疾患>
貧血;赤血球の形から大球性、正球性、小球性貧血に分類されます。大球性になるのは葉酸やビタミンB12不足、甲状腺機能異常の他に、肝硬変や血液疾患で赤血球膜の異常を来している場合です。最も多いのが鉄不足による小球性低色素性になる鉄欠乏性貧血です。食事中の鉄は3価鉄ですが胃酸で2価鉄にされて小腸から吸収され、骨髄に運ばれて赤血球内ヘモグロビンとして存在します。鉄の吸収と排泄は巧妙に調節されており、1日僅か1mgの鉄が腸粘膜の剥離で体外に排出され、ほぼ同量の鉄が吸収されて体内には常時約2gの鉄が貯蔵されており、鉄過剰になることはありません。出血などで血清鉄が低下すると肝臓、脾臓などに貯えられている貯蔵鉄が動員されて貧血の進行を防ぎます。鉄不足の原因は、
①摂取不足(偏食、ダイエット)
②吸収不全(胃十二指腸切除後)
③需要の増大(成長期、スポーツ、妊娠、授乳)
④喪失(痔、月経過多、消化器癌など)
です。高齢者の貧血は慢性的に緩徐に進行することが多く、また身体の活動性が低下しているため症状が現れにくく、自覚症状に乏しいのが特徴です。また、易疲労感や歩行時の動悸、息切れが存在しても老化に伴うものと解釈して医師に訴えないことも多くみられます。高齢者では消化管の癌からの出血や鉄吸収能の低下、食事量の問題から鉄欠乏性貧血になります。
逆に鉄が増加している貧血もあり、白血病や再生不良性貧血、血小板や白血球の減少を伴う、青島幸男さんに発症した骨髄異形成症候群(MDS)があります。MDSの進行は緩徐ですが白血病化することがあります。歯が悪いため野菜の摂取不足から葉酸やビタミンB12が不足したり、胃全摘手術をして5年以上経っていたり、高度の萎縮性胃炎があるとビタミンB12を吸収する胃内因子不足となり、大球性貧血(悪性貧血)となります。腎機能が悪化してくるとエリスロポエチン由来の貧血となり、透析患者さんでみられる腎性貧血となります。
<皮膚疾患>
皮膚は自然経過、紫外線、放射線、化学物質等々で老化現象を起こし、30歳代から見られます。しわの深いところは紫外線老化で、皮膚の弾力繊維(コラーゲンなど)が変性、増殖したためです。老人に多い疾患は皮脂欠乏性の湿疹類と接触皮膚炎、足白癬、褥瘡、薬疹ですが、その他に癌、角化症、掻痒症、蕁麻疹などです。日常生活で問題になるのが糖尿病による壊疽で、糖尿病性神経障害から感覚鈍麻になり、「痛くない」ために血行障害や怪我をしても発見、処置が遅れて治療に難渋することです。また、動脈硬化による末梢循環障害で四肢の冷感、しびれ、チアノーゼを認めます。脂漏性角化症、皮膚筋炎、黒色表皮腫などが内臓の悪性腫瘍のサインであることもあります。老人性乾皮症は乾燥肌ともいい、皮脂欠乏によるもので、掻爬して湿疹性変化を伴います。おむつや排泄物の刺激で陰部 周囲に接触皮膚炎をみます。また、特に打撲をしていないのに腕に紫色の皮下出血が点々と出現することがありますが、これは皮膚の毛細血管の破綻による出血です。高齢による血管の脆弱性が原因と思われ、血管強化にもなるビタミンCで改善することがあります。
<感覚器疾患>
白内障;視力障害の原因の第一位で、目の水晶体というレンズが白濁する疾患で、紫外線、糖尿病などが 原因となります。
緑内障;視神経乳頭が眼圧の上昇で萎縮してしまう病態で、失明原因の第二位です。眼痛、充血、視力低下、頭痛、吐き気で発症しますが、眼圧の上昇しない正常眼圧緑内障もあります。
加齢黄斑変性症;網膜の虚血や炎症で視力低下、失明を来します。
網膜中心静脈変性症;発症率は高くありませんが予後不良例が多く、高血圧、高脂血症、糖尿病や多血症などに合併します。
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