水道水の殺菌効果│豆知識コーナー|練馬区 大泉学園の肝臓専門医・内科 大井手クリニック

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豆知識コーナー

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2004年7月1日

水道水の殺菌効果

ハイライト

● 残留塩素

● 殺菌効果

● 洗浄効果

● 洗浄圧

● コロニー(集落)

水道水は消毒液の代わりになる?

最近、創傷における消毒液の細胞毒性が問題となり、縫合創や褥瘡は消毒液を使うよりも水道水で洗浄したほうがかえって傷の治りが良いという報告があります。これは主に創に対する洗浄効果によると考えられますが、水道水には残留塩素も含まれており、殺菌効果もあると思われます。そこで、水道水の殺菌効果をみた実験を紹介します。
1)試験管内接触法;最も単純な方法で、試験管内で菌液と水道水を混和し、種々の時間放置した後にチョコレート寒天培地に塗布して24時間培養し、生菌数を測定します。我が国は水道法により残留塩素は0.1ppm以上に義務づけられています。黄色ぶどう球菌に対する殺菌効果は、山形県下の病院の水道水の残留塩素0.6ppmでは同病院で使用している4倍希釈のイソジン液と同等であり、低濃度の0.2ppmでは殺菌時間が2倍かかりました。MRSAに対する殺菌効果はイソジン液の半分でした。緑膿菌に対する殺菌効果は残留塩素0.2ppmでは弱く、0.6ppmで有効でした。
2)菌液塗布寒天平板法;1)の方法はいわゆる裸の細菌に対する殺菌効果をみる方法でしたが、より臨床に近い状態(有機物の中に隠れている、またはバイオフィルム状態)の細菌に対する殺菌効果を検討しました。有機物を含むチョコレート寒天平板に黄色ぶどう球菌を塗布し、15分後に水道水や消毒液を寒天板上に静置して18時間培養後にコロニー数を測定しました。イソジン液やヒビテン液を添加しておくとコロニーの発育は80%ほど抑制されましたが、残留塩素0.5ppmの水道水では30%しか抑制できませんでした。この原因は塩素の蒸発で殺菌効果が持続しなかったためと思われます。添加する水道水の量を増やすと消毒液並の効果が出ました。
3)洗浄殺菌効果;水道水の量、つまり塩素の量を増やすと殺菌効果が上がるのが解ったため、次に水道水の洗浄効果を加えたらどうかという実験です。チョコレート寒天培地に黄色ぶどう球菌を塗布し、1時間後に針付き注射器を用いて100mlの水道水(残留塩素0.5ppm)あるいは生理食塩水で30秒間培地を洗浄してから18時間培養してコロニー数を測定しました。結果は、約50%程コロニーは抑制されましたが、2)の消毒液の効果には及びませんでした。洗浄圧を変えてみる、つまり同量の水道水や生理食塩水を短時間で吹き付けると殺菌効果が現れます。褥瘡の洗浄でも強めの水圧が良いことが示唆されているのが納得できます。子供の伝染性膿痂疹(とびひ)の水疱を破った後に1分間水道水で洗浄したところ、菌数はかなり減少しましたが消失には至らなかったので、やはり洗浄のみでは不十分のようです。 

残留塩素

水道水を実際に使う場合に問題となるのが放置、加温などの影響による残留塩素濃度の変化です。栓なしガラス瓶や試験管に水道水を5時間放置すると、残留塩素濃度は広口で80%、狭口で25%低下します。水道水を蒸留水で2.5倍以上に希釈するだけで残留塩素は消失します。煮沸や加熱では残留塩素は短時間に消失します。2日間使用しなかった蛇口からの水道水には、使用直後に残留塩素はほとんど認められず、流水で5分以上経つと0.4ppmに上昇しますので、水道水の殺菌効果を期待する時には5分以上流してからの使用が良いようです。その他に、水道水の残留塩素濃度は浄化槽から遠いところ、夏期、貯水槽のあるビル、日光照射で低下します。まとめますと、消毒液の効果には劣るものの皮膚の浅い傷や細菌感染のない褥瘡や皮膚潰瘍は水道水で流水洗浄することで菌数を減少させることができるため、在宅での処置ではわざわざ生理食塩水を使用しなくても手軽で経済的といえます。
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