肺血栓塞栓症│豆知識コーナー|練馬区 大泉学園の肝臓専門医・内科 大井手クリニック

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豆知識コーナー

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2004年11月1日

肺血栓塞栓症

ハイライト
●下肢の不動
●静脈ポンプ
●血液凝固能亢進
●静脈壁損傷
●呼吸困難
●胸痛


エコノミークラス症候群

新潟中越地震で被災した人々の一部が車中で寝泊まりし、エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症)で亡くなったという報道がありました。また、サッカー全日本代表の高原選手が長時間飛行機移動で2度も罹りましたし、術後の長期臥床や心不全、妊娠による子宮増大、肥満でも発症します。肺血栓塞栓症とは足や骨盤内の深部静脈系に発生した血栓が遊離して肺に飛んで肺の血管を塞ぐ病気です。病型には急激な発症・経過をたどる急性型と慢性に経過して肺高血圧を来す慢性型があります。この疾患は米国では虚血性心疾患、脳血管障害に次いで多く、年間発生頻度は60数万人と推定されています。我が国では本症が呼吸器と循環器の狭間であったためかその認識や研究が遅れていましたが、院内での発生頻度は米国並みです。なぜ静脈に血栓ができるのか?
<原因>
(1)静脈血流の停滞;長期臥床などによる下肢の不動です。通常、静脈の血液環流は歩行による下肢筋肉の収縮により筋肉内の静脈叢が圧排されて血液が心臓へと向かいます(静脈ポンプ)。
(2)血液凝固能の亢進;先天的に凝固能が亢進している病態や、悪性腫瘍、術後、女性ホルモン使用、経口避妊薬内服、ネフローゼ症候群、多血症、脱水で起こります。
(3)静脈壁の損傷;外傷、カテーテル検査や治療、泌尿器科や産婦人科などの骨盤腔内の手術、整形外科での大腿骨頭置換術、静脈炎などで起こります。
<症状>
突然の呼吸数増加、呼吸困難、深吸気で増強する胸痛、血栓の発生した片側下肢の浮腫、ふくらはぎ痛などです。病院内での発症は、安静解除後の初めての歩行、とりわけ排尿、排便時の蹲踞の姿勢により静脈壁の血栓が剥離し、その後の歩行で静脈ポンプが作動して血栓が肺に飛びます。急性型肺血栓塞栓症の三分の二は院内発症です。
<診断>
血液検査、心電図、胸部レントゲン検査、低酸素血症などの結果で疑いを持ちますが、典型的所見を呈する場合が少ないので見落としやすい疾患です。確定診断は肺シンチグラム(アイソトープを用いた血流分布評価)、心エコー、CT、MRI、下肢静脈エコー、肺動脈造影などで行います。
<治療>
治療目的は急性期の究明と再発予防にあります。しかしながら全症例の10%を占める発症1時間以内の急死例の救命は困難であり、肺血栓塞栓症の原因である深部静脈血栓症の予防が重要です。
(1)抗凝固療法;初期はヘパリンの静脈内投与、その後ワーファリンの経口に切り替えます。血栓形成の原因が一過性であれば3~6ヶ月程度、永続するものであれば半永久的に内服します。
(2)血栓溶解療法;血栓溶解剤を点滴静脈投与し、肺血管に捕捉された血栓、深部静脈の血栓を溶解除去します。
(3)肺動脈血栓摘除術;内科的治療にもかかわらず血行動態が安定せず低血圧が遷延するもの、あるいは重症例で血栓溶解療法が禁忌な例は手術適応です。近年、血栓吸引療法や血栓破砕療法などが試みられています。
(4)下大静脈フィルター;深部静脈から遊離した血栓を下大静脈に留置したフィルターで捕捉し、肺への流入を防ぐ方法です。抗凝固療法に加えてより高い再発防止を目指すために考案されました。
<予防>
肺血栓塞栓症を予防するためには深部静脈での血栓の発生を防ぐことが重要です。術後の場合はベッド上での下肢の運動を奨励し、早期離床に努め、下肢のマッサージ、弾力包帯、弾性ストッキング、抗凝固療法などが有効です。
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