ライフスタイルと疾患(各論)│豆知識コーナー|練馬区 大泉学園の肝臓専門医・内科 大井手クリニック

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豆知識コーナー

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2005年12月1日

ライフスタイルと疾患(各論)

ハイライト
●アルツハイマー病
●脳血管性
●精神社会的不活発
●運動不活発
●頭部外傷
●歯牙喪失
●低学歴
●脳活性化訓練(介入)
●生き甲斐

老年期痴呆(認知症)

今回は、ライフスタイルと老年期痴呆について紹介します。「ぼけたくない」とは誰もが願うことでありますが、食塩と高血圧との因果関係のように、痴呆を誘発する明らかな因子の解明は進んでいません。厚生労働省や専門家による痴呆とライフスタイルについての解析を概説します。痴呆は現在認知症と改名され、アルツハイマー病(AD)と脳血管性痴呆(VD)がありますが、それぞれの患者の40~50才頃のライフスタイルを解析したところ、発病に有意に寄与していた危険因子は、ADでは
(1)精神社会的不活発
(2)運動の不活発(運動不足)
(3)頭部外傷
(4)歯牙喪失
(5)低学歴でした。
VDの危険因子は
(1)精神社会的不活発
(2)運動の不活発(運動不足)
(3)脳血管障害の既往・高血圧、糖尿病
(4)健診不受診
(5)低学歴でした。
以上の結果からAD、VDに共通しているのは(1)、(2)、(5)で、特に「若い時からの精神・運動不活発」が痴呆化を招くライフスタイルと結論されています。もう少し具体的に表しますと、ADでは新聞購読・読書がまれ、パートナーを要するレジャーが乏しい、意識を失うほどの頭部外傷、散歩しない、歯が半分以上ない、VDでは40~50才頃の運動不足、余暇利用の不活発、高血圧の既往がある、意識を失うほどの頭部外傷です。
1990年に当時の厚生省精神保健課が専門家らと「痴呆予防の十箇条」を作りましたが、基礎研究不足などから公表されませんでした。その内容は以下のとおりです。
1.いつまでも興味を持って学びましょう
2.趣味をもち、豊かな老後を迎えましょう
3.友達を増やせ、心の枝伸ばせ
4.無理せずに運動すれば良い刺激
5.頭への怪我や衝撃、痴呆の原因
6.歯を守り、おいしく噛んで良い一生
7.成人病、防いで脳も健康に
8.健診は痴呆の頼れる防波堤
9.物忘れ、ひどくなったら相談を
10.ボケ治療、一歩退き、二歩前進。
以上の点をふまえ、当面の痴呆一次予防は以下の5項目となります。
(1)高血圧・動脈硬化症対策;減塩食や運動といった伝統的対策
(2)頭部外傷などの脳障害の予防
(3)若い時からの精神・運動の活性化;巷で言う「頭を使わなければボケる」というのがとても分かりやすいうえに、とても重要な点ですが、脳の活性化を促す訓練は軽症痴呆に有効であることが報告されています。
(4)歯牙保存;ADでは半分以上の歯牙損失が46%、対象者では40%に認められ、有意に歯牙保存は意味あることと推定されています。歯牙・歯周組織は極めて活発な知覚器官であり、一側性抜歯で同側の三叉神経が変性したり、咀嚼運動低下で脳循環低下や栄養低下を生じ、ひいては大脳皮質萎縮とつながることが想定されています。
(5)生き甲斐対策;生き甲斐のある活発な精神社会活動が痴呆化に抵抗することは確実と考えられています。
本来、生き甲斐というのは自ら発見するものであり、他人から与えられる物ではないので、我が国の生き甲斐対策は外国からみると奇異に見られがちですが、生き甲斐を見つける契機にはなりうる点で、有用な施策といえます。
痴呆二次予防;デイケアセンターのような施設で脳活性化訓練(介入)を施行した群と未施行群では、短期的には効果が認められています。内容は運動療法、理学療法(歩行訓練)、物理療法(入浴)、生活動作訓練(食事の準備など)、右脳を刺激するカラオケ、陶芸、手芸、書道、詩吟、茶道、ちぎり絵、鑑賞(映画・音楽)などですが、「知的低下」に関してはVDで有効、ADでは改善は認めませんでした。生命予後に関してもVDで有効、ADでは無効でした。また、「家族の支援」はAD、VD共に好影響を示しています。認知症初期段階で介入していくことが、増悪阻止の良策といえます。 
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