機能性胃腸症 Functional dyspepsia(FD)│豆知識コーナー|練馬区 大泉学園の肝臓専門医・内科 大井手クリニック

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豆知識コーナー

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2007年7月1日

機能性胃腸症 Functional dyspepsia(FD)

ハイライト
●逆流症型
●運動不全型
●潰瘍型

慢性胃炎とは違う?

今回は慢性胃炎としてかたづけられていた、そして新たな対応が必要であることが判明してきた「機能性胃腸症(FD)」について概説します。日常的に訴えの多い胃痛、胃もたれ、胃部不快感、吐き気などの症状は、取り敢えず「胃炎ですね」と診断され、また胃カメラや胃バリウム検査で粘膜の発赤などの粘膜異常があれば「慢性胃炎」と診断されてきました。このような背景には、これまで胃炎の原因や診断基準が明らかではなかったためです。しかしながら、ヘリコバクターピロリ菌が組織学的胃炎の原因であることが明らかとなり(さらに悪化すると胃潰瘍)、胃炎というのは「組織検査の結果、ヘリコバクターピロリ菌に起因する胃粘膜の炎症」と定義され、胃癌や胃潰瘍がないのに胃の症状を訴える場合は「機能性胃腸症」と呼ぶようになってきました。欧米では日本に比べると胃癌は少なく、胃癌による死亡も少ないため、胃粘膜の異常の診断よりも胃痛などの自覚症状発現のメカニズム解明とその治療に関心が高かったため、早くから研究が進められ、その概念が確立されてきました。
【FDの分類】
①食後胃部膨満感;いつまでも胃に食べ物が残っているような感じ
②食後早期飽満感;食事開始直後に胃がいっぱいになってしまう感じで、通常量の食事が食べられない
③心窩部痛;痛みは主観的なもので、不快な感覚も含める
④心窩部灼熱感;heatとして感じる不快な感じ
上記のどれか一つ以上が6ヶ月以上続き、胃内視鏡検査で潰瘍などの原因となるような疾患を認めない場合にFDと診断されます。
【FDの成因】
胃酸分泌の異常(亢進あるいは低下)、胃内容物排出能異常、胃運動リズム障害、胃の知覚過敏、小腸の運動障害、ストレスなどの心理的要因、ヘリコバクターピロリ菌感染等々が指摘されています。通常、食べ物が胃に入ると、胃上部の噴門に一旦貯蔵され、収縮運動と胃液で攪拌されて粥状になり、少しずつ下方へと送られて十二指腸へ排出されます。我々が食物をおいしく、満腹感なく食べられるのは、適度に噴門が拡張して一時貯蔵するからです。この拡張能力が低下すると、少量の食べ物でもすぐに満腹感を感じて、食欲は低下します。胃下垂の場合もあてはまります。胃の知覚過敏というのは、僅かな食べ物が胃に入っただけで満腹感を感じてしまうことで、ひどいと不快感や痛みになります。心因性要因としては、例えば人間関係や仕事、経済状態などが原因となったり、老人ホームで寂しさや、優しさを求めて症状を訴えることがあります。
【治療】
治療薬の選択にあたっては、症状からみた病型分類を用います。
①逆流症型;胃酸が食道内に上がってきて胸焼け、ノドの違和感、咳などを引き起こしている場合です。酸分泌抑制剤、消化管運動改善剤を投与します。
②運動不全型;胃もたれや腹部膨満感、吐き気、食欲不振などの停滞感を中心にした症状です。これには消化管運動改善剤や場合によっては漢方薬や精神安定剤、酸分泌抑制剤を加えます。
③潰瘍型;痛みを主な症状とした状態です。胃酸分泌抑制剤を中心に投薬します。
【指導のポイント】
患者さんが気を付ける点は、
①食事は少量・頻回摂取にし、高脂肪食を避け、過度のコーヒー・刺激物を制限、便秘の場合は適度な歩行運動を勧めます。
②精神的ストレスが消化管機能に悪影響を及ぼすことを理解してもらいます。
③薬剤の作用機序と効果を熟知してもらい、服薬は患者さん自らが適宜決定して内服してもらうのが理想です。

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