狂牛病│豆知識コーナー|練馬区 大泉学園の肝臓専門医・内科 大井手クリニック

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2002年12月1日

狂牛病

伝達性海綿状脳症

狂牛病
今回は、我が国の食生活に多大な影響を及ぼした狂牛病について解説します。つい昨年までは狂牛病なんぞはイギリスあたりのヨーロッパの問題、対岸の火事であって、国産和牛を食べていれば安心と思っていたのが、なんと我が国でも狂牛病が発見されたうえに、感染ルートと判明していた肉骨粉を政府が全面禁止していなかったなど、相変わらずの政府や官僚の落ち度に開いた口が塞がらない思いでした。狂牛病の本体はタンパク質原因説が有力で、異常プリオンによるものです。人では第20番染色体に存在するPrP遺伝子がプリオンという正常タンパク質を産生しており、脳に多量に分布しています。この立体構造が変化して異常化することが原因なので、ウイルスや細菌などのような感染症とは違っています。この異常化プリオンによる病気を総称して「プリオン病」といい、牛では狂牛病、羊ではスクレイピー、人ではクロイツフェルト・ヤコブ病があります。これらの病気では脳のタンパク質が変性して脳にはスカスカのスポスポンジ状の空砲が出現し、いわゆる「海綿状化」を呈します。その進行はとてもゆっくりですが致死的です。狂牛病と人間の関係ですが、1996年に人のプリオン病のリストに変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が加わり、その原因に牛の異常化プリオンがあげられました。牛の異常化したプリオンが人体に入ると(伝達性)、ドミノ倒し現象で正常プリオンが異常プリオンに変化して脳細胞を破壊して発病します。異常化したプリオンは熱、紫外線、放射線、酸、アルカリ、アルコールなどには極めて安定であり、始末に負えないタンパク質です。皆さんはテレビなどで牛がヨタヨタして倒れる映像を見たことがあると思います。

プリオン病のメカニズム

プリオンは正常な形をしていれば生物にとってはとても大切なタンパク質です。体のいたるところに存在していますが多くは脳の神経細胞に存在し、運動や睡眠に関係する大事な役割を果たすと推定されています。脳のなかでも特に延髄に多く分布しています。構造変化を来した異常プリオンは蛋白分解酵素や酸、アルカリをはじめとしたあらゆる物質に対して極めて安定であるため、神経細胞に蓄積して脳を破壊し、脳はスポンジ状になっていきます。人のプリオン病であるクロイツフェルト・ヤコブ病には家族性に発症するもの、単発で発症するもの、医原性のものがあります。では、どのようにして牛の異常プリオンが人に伝達するのか。通常食品中のタンパク質は消化管内で蛋白分解酵素でアミノ酸に分解されて吸収されてタンパク質に再構築されますが、異常プリオンは前述のごとく極めて安定なために分解されず、そのまま吸収されます。そしてこの異常プリオンがなぜ脳に達するかは今のところ不明です。
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