再生医療│豆知識コーナー|練馬区 大泉学園の肝臓専門医・内科 大井手クリニック

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2003年6月1日

再生医療

ES細胞(embryonic stem cell)

再生医療
人類を含めた生命体は、その構造の一部が損傷を受けたり欠落した時には自己再生して修復する能力を持っています。しかしながら、修復能には限界があり、損傷の程度がひどいと再生不可能となり、例えば脳や神経の損傷では手足の麻痺を残したり、心臓では心筋梗塞、肝臓では肝不全となって生命を脅かす状況になってしまいます。損傷した臓器の自己再生、回復が望めなくなると、次に臓器移植という手段を考えなければなりません。我が国でも数年前に臓器移植法案が成立して生体間移植のみならず脳死患者さんからの移植が可能になりましたが、現実にはどちらも提供者(ドナー)不足のため、十分な医療効果があがっていないのが現状です。そこで登場するのが自己、あるいは他人の細胞を利用して損傷した臓器の細胞を人工的に作成して臓器を蘇らせる再生医療です。再生医療を達成させるための方法としては、自己複製能を高める薬剤を使うか、臓器の一部を体外培養で増やしてからもどすか、幹細胞(いろいろな組織に分化していく基の細胞)を注入・移植するかです。先月、ヒトES細胞の作成に成功したというニュースを目にした方もいらっしゃると思いますが、我が国で初の成功です。ES細胞とは幹細胞のひとつで、個体を形成する全ての細胞へ分化可能で、ほぼ無制限に増殖する細胞です。マウスやサルのES細胞での研究は進んでいましたが人での研究が課題でした。簡単に説明しますと、精子の受精した受精卵は細胞分裂を開始し、細胞塊を擁した胚盤胞になります。この細胞塊を取り出して線維芽細胞上で培養すると分化(器官形成)することなく安定して無制限に増殖します。これがES細胞です。
このES細胞が本当に分化して各器官を発生していく細胞であるかを確認することが、人で応用出来るか否かを左右します。確認するには免疫拒絶をしないマウスに接種した後、様々な組織(神経や筋肉や肝臓など)で構成されたテラトーマと呼ばれる奇形腫が形成されればOKです。ヒトES細胞を用いた移植再生医療を実現させるには多くの課題があります。作成過程でウイルス感染などの汚染なく安全にES細胞を供給できるかどうか、安全な保存が可能かどうか、目的とする臓器に確実に、効率よく分化誘導できるかどうか、移植後に無尽蔵な増殖を抑えることができるかどうか(自殺遺伝子などの組み込み)、拒絶反応を抑えられるかどうか、クローン細胞としての倫理上の問題などです。今のところマウスでの基礎研究では脊髄損傷修復やパーキンソン病でのドーパミン産生神経細胞に有効性が報告されています。スーパーマン役だった米国の男優が脊髄損傷し、再生医療に投資して再起をかけています。 
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