熱中症│豆知識コーナー|練馬区 大泉学園の肝臓専門医・内科 大井手クリニック

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豆知識コーナー

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2004年8月1日

熱中症

ハイライト

●熱けいれん

●熱失神

●熱射病

●塩分不足


分類と発症機序

熱中症とは高温、多湿、無風などの熱暑環境下で発生する身体障害の総称で、熱けいれん、熱疲労、熱射病に分類されます。従来、我が国における熱中症は労働現場で多数発生していましたが、労働基準の策定などでその数は減少し、代わってスポーツ活動に伴う発症が屋内、屋外を問わず増加しています。さらに高齢化社会に伴って老人の発症数が増えています。その理由は、
(1)独り暮らしの増加
(2)既存疾患や内服薬による正常な対応の鈍化
(3)加齢による暑熱に対応する身体機能の衰弱
(4)家屋の西欧化に伴う気密性の向上による風通しの悪さ
などです。東京消防庁の発表では男性では活動性の高い10~60才代に、女性では10~20才代と60~80才代に発症が多かったそうです。特に10才代では男女とも屋外スポーツ時に多く、また70~80才代の女性は屋内安静時の発症が多いようで、長生きしている独り暮らしの女性に目立った現象です。
<発症機序>我々の体は身体機能の恒常性を保つために体温が上昇して血液温度が上昇すると脳の視床下部の体温調節中枢が刺激され、視床下部や末梢神経(皮膚の神経)の温熱受容体が活性化され、体温を下降させる働き、つまり輻射・伝導・蒸散による放熱が行われます。具体的には皮膚の血管が拡張して血流が増加して(それに伴い内臓血流は低下する)体外に熱伝導させたり、発汗が増進されて気化熱を利用して熱を放散させ、頻脈や心拍数の増加で分時換気量も増加させます。これらの機序が破綻した時に熱中症が発症します。中枢温度が42℃になってしまうと酵素の変性、細胞機能障害、脂質の液化、組織障害が生じます。
<熱中症の分類>
(1)熱けいれん(heat cramp);短時間の大量発汗に伴う塩分の喪失で、水は飲んでいても塩分補給が不足して低張性脱水となり、全身けいれんではなく局所的な筋肉の有痛性のこむら返りをおこし、嘔気、めまい、口渇、腹痛、意識混濁もみられます。一般的に体温上昇は伴いません。
(2)熱疲労(heat exhaustion);熱放散のための血管拡張による相対的な循環血液量の低下と、発汗に伴う脱水、塩分不足が加わって熱疲労となります。心拍出量の低下で低血圧(熱失神)、頻脈、脱力、倦怠感、めまい、頭痛、吐き気などを呈し、進行すると意識障害を来します。体温は40℃以下ですが、処置の遅れは熱射病へとつながります。
(3)熱射病(heat stroke);熱疲労が進行して強いうつ熱状態となり、体温が40℃以上を呈します。発汗停止となり、高度の意識障害、、脳浮腫を来して高率に死亡します。

スポーツ時の熱中症の予防と初期処置

(1)急激な暑熱環境への暴露を避け、運動強度は徐々に上げて体を馴化させることが大切です。
(2)適切な水分と塩分の補給。放熱の一環として発汗が起こると水分と一緒に塩分の喪失も伴います。水分のみ補給すると血液中のNaClの濃度が低下し、飲水刺激が抑制を受けます。しかし、腎臓からは余剰水分の排泄がおこります。この状態になると運動能力や体温調節機能が低下してきます。このような悪循環に陥らないために食塩入りの水分補給が大事で、飲みやすさ、吸収しやすさからスポーツドリンクが適しています。
(3)体調不良時は運動能力の低下のほかに体温調節機能も低下してる可能性が高いため、運動は避けることが大事です。
(4)熱放散が阻害される環境を避けること。体育館は窓を開けて通気をよくします。初期処置としては、炎天下であれば日陰に移し、クーラーの効いた室内があれば移します。服を脱がせ、体をあおいだり首や鼠径部に水をかけ、飲水させて救急車を要請して下さい。
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