メタボリックシンドローム│豆知識コーナー|練馬区 大泉学園の肝臓専門医・内科 大井手クリニック

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豆知識コーナー

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2006年10月1日

メタボリックシンドローム

ハイライト
●高血圧
●糖尿病
●高脂血症
●狭心症
●心筋梗塞
●脳血管障害

診断基準、臨床、実態、治療

今回は、最近新聞やテレビなどでさかんに見聞きするようになったメタボリックシンドロームについて概説します。高血圧、糖尿病、高脂血症は過食、肥満、運動不足などに基づく生活習慣病であり、それぞれは独立した動脈硬化性疾患、いわゆる狭心症、心筋梗塞、脳血管障害の危険因子ですが、これら因子の重複が動脈硬化性疾患のより高頻度の発症や重症化を引き起こすことが明らかとなりました。そこで複数の動脈硬化危険因子、つまり高血圧、糖尿病、高脂血症のうちいくつかを合併している病態を「メタボリックシンドローム」と呼称するようになりました。
1999年にWHOがメタボリックシンドロームの診断基準を提唱しましたが、日本人の体型には合わなかったため、2005年に我が国で独自に日本人用の診断基準が作成されました。以前の診断基準に比べて腹部肥満、つまり内臓脂肪に重点がおかれるようになりました。つまり
腹囲;男性85cm以上、女性90cm以上
中性脂肪;150mg/dl以上、またはHDL(善玉)コレステロール40mg/dl未満の脂質代謝異常
血圧;135/85以上の高血圧
空腹時血糖110mg/dl以上の高血糖です。
そして①に当てはまり、かつ②、③、④のうち二つ以上が該当するとメタボリックシンドロームと診断されます。しかしながら、心血管系疾患の発症率と腹囲の因果関係を検討した最近の報告では、上記の男性の腹囲は少々厳しく、女性の腹囲は少々あまいということが判明し、実際のところ腹囲について現実的な数値は男性90cm以上、女性80cm以上というアジア人用の診断基準を用いた方が、新血管系疾患の予測因子には適当です。ちなみに欧米では腹囲は男性102cm以上、女性88cm以上で腹部肥満としています。
我が国のメタボリックシンドロームの実態;
最近の20年間で男性および高齢女性で確実に肥満人口が増加しており、それに伴って内臓脂肪蓄積を基盤とするメタボリックシンドロームも増加傾向にあります。日本のある都市で、30才代から50才代の人たちのメタボリックシンドロームの危険因子の頻度を調査したところ、腹部肥満は男性44%、女性9%、高中性脂肪は男性36%、女性12%、低HDLコレステロールは男性11%、女性3%、高血圧は男性55%、女性31%、高血糖は男性20%、女性9%でした。男性では腹部肥満、高中性脂肪、高血圧の3つの因子が高頻度でしたが、女性では高血圧ぐらいでした。さらに、メタボリックシンドロームと診断された年齢は、男性では30才代で11%、40才代で19%、50才代で27%、60才代で35%と年齢と共に著しい増加を認めます。一方、女性は全体的に低頻度で、メタボリックシンドロームと診断されたのは閉経前2%前後、ただし閉経後は6%以上となり、約3倍に増加するので要注意です。
メタボリックシンドロームの治療
内臓肥満の解消が目的なので減量が基本ですが、合併しているインスリン抵抗性(自分の膵臓から出ているインスリンが効率よく作用せず空回りして、高血糖になる)や血管障害を視野にいれた対策が重要です。食事療法、運動療法はインスリン抵抗性の改善や血管障害改善作用がありますが、それでも不十分であれば薬物療法になります。高血圧用の降圧剤には作用機序の違いから数種類に分類できますが、そのなかの一つにインスリン抵抗性や脂質代謝に対する薬理作用を併せ持っているものがあります。また高脂血症の薬にも心血管保護作用を併せ持っているものもあり、一石二鳥、三鳥の効果を期待することができ、うまく組み合わせて治療するとメタボリックシンドロームの予防に対してより効果を発揮します。
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