栄養の誤解│豆知識コーナー|練馬区 大泉学園の肝臓専門医・内科 大井手クリニック

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豆知識コーナー

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2009年2月1日

栄養の誤解

ハイライト
●脳
●ブドウ糖
●BMI
●コレステロール
●トリプトファン
●セロトニン 

痩せればいいのか?

医学専門雑誌に紹介された、ちょっとショッキングな情報をご紹介します。私たちの寿命は江戸時代では平均35才、明治、大正、昭和初期を通じても50才前後でした。ところが、今や男性では79才、女性では85才までに達しています。この長寿を可能にした要因は栄養の向上と医学と衛生の進歩です。実際、日本人の寿命の伸びと脂肪や動物性蛋白質の摂取量は直線的に比例しています。もうひつと大事なのは、脳の進化です。人類の祖先がアフリカに現れた時の脳の大きさは400gでした。250万年位前に道具を使い始めたころは600g、150万年前に火を使う原人が出現した時は900gでした。現代人の脳の平均は1350gですが、それでも体重の2%前後です。ところが、脳は摂取した全エネルギーの24%を使っています。この脳は体の他の部分とは違ってブドウ糖しかエネルギー源として利用できません。筋肉などはブドウ糖がなくても脂肪などをエネルギー源にして働かせることができますが、脳はこのようなことが出来ません。さらに、脳にはブドウ糖を貯えることが出来ません。一説では高齢者でアルツハイマー病の人は血糖値が低いとか、ぼけないで活躍している高齢者の方には甘い物が好きな方が多いとも云われています。
最近、痩せている人の糖尿病が増えており、厚生労働省の発表では糖尿病患者のBMIの平均は23.1と、正常者と変わりありません。糖尿病を心配してブドウ糖を控えると、ブドウ糖しか使えない脳は体に命令を出して、脳以外の体の部分でインスリンによるブドウ糖の利用を制限させます。結果的に血糖が利用されないため、インスリン抵抗性の高血糖、つまり糖尿病になります。日本のある地域の検討では、BMI18.5以下の痩せている人の方が太っている人よりも糖尿病になりやすいという結果が出ています。誤解の無いようにまとめますと、糖尿病予防のためにダイエットで痩せれば良いというのではなく、運動して筋肉を使い、エネルギー源として糖分も摂ることが大事です。糖尿病だからといって糖分を完全にシャットアウトにすることは間違っています。脳は情報の伝達に電流を使っているので、漏電を防ぐために多くの脂肪、特にコレステロールを用いています。キレる子供や若者を調べてみると血中コレステロールが低い場合が多いと云われています。また、認知症の高齢者でもコレステロールが低い例が報告されていますし、コレステロールが低いとアルツハイマー病で脳に蓄積するアミロイドという物質が増えてくると報告されています。 
さらに大事なのは、肉(マグロなどの魚の肉でもよい)を摂取することです。肉の中に含まれているトリプトファンは脳内でセロトニンという物質になり、これが精神の安定をもたらし、うつ病を予防します。私たちの体の中ではトリプトファンを作ることが出来ないため、食べ物として摂取する必要があります。トリプトファンは摂取後に脳に運ばれる時にインスリンを必要とするため、糖分も一緒に摂ることが大切です。つまり、含水炭素であるご飯、パン、麺などです。
食後のスウィートも良いでしょう。さらに、トリプトファンがセロトニンになるには光刺激、運動、良い思い、睡眠などが大事です。最後に、記憶の入り口とされる海馬の細胞は80才を過ぎても増殖することが分かってきました。増殖のための刺激は1に運動、2に刺激ある環境、3に頭を楽しく使うことです。昨年から始まったメタボ健診、腹囲測定など議論を残したままですが、ただ痩せればいいというものでもありません。
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